甘いもの好きのみつばち〜みつばちの味覚〜

甘い花の蜜を蓄えて、あま〜い蜂蜜を作るみつばちたち。
蜂蜜は、花粉と並んで栄養豊富で、日々のエネルギー源や冬の蓄えとしてみつばちたちにとって大切な食料。
「ちょっと分けてね。」なんて、彼女らの巣から少しもらって美味しくいただいている中で、何気なく、みつばちは甘党なのかな…なんて思いを馳せるものの、みつばちに味覚なんてあるのでしょうか?

基本的に甘いものならなんでも好き

日中、巣から半径1〜2㎞を飛び回っては蜜源を探し、蜜を集めてくる働き蜂たち。
季節ごとに咲く様々な花からせっせと集めて貯蔵していく働きものです。
そんな彼女らは、実は花に限らず甘いものなら何でも好きで、花蜜同様に蜜胃に貯めて巣まで持ち帰り、しっかりと貯蔵していくのです。

例えば、冬場に作られる干し柿。

軒先でこんな風に吊るされてますよね(画像:wikipediaより引用)

渋い渋柿の皮をむいて、さっと茹で、紐にくくって吊るしておくと冬のカラリと乾いた風で乾燥・熟成して、しっとり甘〜いおやつになります。
そんな干し柿、干している隙に鳥につつかれたりして傷がつくと、そこから中の甘いエキスがじわりと染みてきます。
そこに通りかかったみつばちが「あ!甘いものがあるぞ!」とせっせと集めて巣に持ち帰る、なんてこともあるのだとか。
うーむ、これは干し柿を作って観察してみたいところ。
寒くなってきた頃に、ひょっこりみつばちが訪れてくれたら嬉しいだろうなぁ。

そんな甘いもの好きのみつばち、甘いものを出してくれるなら相手が虫だって構いません。
甘露蜜、という言葉を聞いたことがある人も少なくないのではないかと思います。
その甘露蜜、蜜源となっているのは花ではなく樹木。
ドイツでは最高級品として大変好まれているという、モミの木など樹木由来の特別な蜂蜜が甘露蜜。

モミの木。クリスマスツリーに使われる木、というと分かりやすいのかな。針葉樹林のある標高の高い場所で甘露蜜は作られる。

樹木の精油を含むため、独特の香りがあり、ミネラル豊富で濃い色味が特徴的。
でも、みつばちが直に樹木から樹液を啜ったりはできません。
松やブナ、樫の木などの甘い樹液を出す木に、アブラムシやカイガラムシ、アリマキ、カメムシの仲間などの虫が、樹皮に口針を刺し、その甘い樹液を吸います。

モミの木の樹皮(wikipediaより引用)

樹液は糖度が高く、虫たちが必要な栄養分を吸収しても、大量の糖が余ります。
残った糖は、体外に分泌され、カイガラムシであれば分泌物が結晶化して貝殻状の被覆物になります。
また、アブラムシやアリマキは甘い分泌物を体から出して生きていくことで、甘い分泌物を欲しがるアリが寄り付くことで、彼らの天敵から身を守ることにもつながっているのです。
そして、そんな彼らが分泌する甘いものをみつばちも狙います。
花の蜜に限らず、甘いものが大好きなみつばちにとって、分泌物も貴重な蜜源の一つです。

本能的行動系に結び付けられている甘味

蜂蜜は、果糖とブドウ糖からできていて、その香りに加え、甘味がなんとも言えぬ幸せな気持ちにさせてくれる。甘いと感じるものは、みつばちや人を含める多くの生き物にとって、生きる上でプラスに働く。よく言われることだけど、ブドウ糖は腸での消化吸収が非常によく、体を回復させたいときに、優しく素早く効く。
そう、ブドウ糖を摂取した際、甘味を認識し好ましく感じられるようにできているのは、生き物として理にかなっていると言えるわけです。
「人を含め多くの動物では甘味の感覚が脳の神経系の中で、生きていくためにプラスに働くシステム、つまり本能的行動系に結び付けられている。」(尼川,2013)ということですね。

そんな蜂蜜の成分はこちら
糖類(ブドウ糖、果糖)、水分、カリウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、有機酸(グルコン酸)、ビタミンB

生存に必要な物は、ちゃんと生物が好ましく感じる(積極的に摂取したくなる)ようになっているのだなぁ

花蜜を選ぶポイントは甘さ

花は香りや見た目の華やかさ、蜜の甘さなど、花ごとに様々な違いがある。
見た目は地味でも香りが強い花や、見た目も香りも華やかだが蜜は薄い、というものなど色々な場合がある。
人間なら「甘さ控えめで香りにクセのあるのが好き」とか
「香りものは苦手だけど、甘さしっかりで見た目が華やかなのがテンション上がる〜」とか
色々と好みが分かれそうなところだけど、
みつばちたちは「しっかり甘い」というのが第一、何より甘さ重視、ということらしい。
研究者たちの実験では、良い餌を見つけた偵察隊のみつばちが「こんな素晴らしい蜜源を見つけたよー!」と仲間たちに8の字ダンスで報告する際、糖度が高く量も多い蜜源を見つけているものほど、ダンスの勢いもターン数も多い、激しいダンスになることが明らかにされているのだという。

派手なルックスのアザミと・・・

大人しい印象のシロツメクサ。どっちが好きなの?って聞かれたら、蜜が甘い方というわけだね。

ちなみに・・・
野外実験で、蜜源としての造花に色々な糖度のショ糖を置き、観察したところ、糖度が上がるにつれてターン数も増加したという報告があるという。
また、その際に同条件で距離を変えて観察すると、遠い蜜源の方がダンス時のターン数が減少していたという。これは、蜜源までの「運搬コスト」を考慮して報告されているのではないかと分析されているそう。

 

みつばち=甘党

というわけで、今回は甘いものに目がないみつばちの姿が見えてきました。
しかし、いくら甘い物万歳と入っても運搬する際の労力についても大事だと考えて、8の字ダンスでの報告時に運搬コストにも考慮したアピールが行われているというのはちょっとビックリでした。賢いよ、みつばち。小指の先ほどしかないのに、そんなことまで考慮できるのかと驚くばかりです。

 

なお、文中において参考文献に孫引きが多分に含まれていたりしますが、コラムということでお許しください。

参考文献及びWebサイト
・尼川タイサク、2013、『マキノの庭のミツバチの国』西日本出版社
・坂本文夫、2016、『ハチ博士のミツバチコラム』京都ニホンミツバチ研究所
・イタリア発ハチミツ作り 養蜂の世界と日本の田舎暮らし https://ameblo.jp/buonmiele/entry-11978539020.html
・あぷりのお茶会 赤坂・麻布・六本木 http://ochakai-akasaka.com/170310-honeydew-honey/

淡路島のたまねぎ②早生といえば

気が付けば、5月も終わり。

淡路島では、今がたまねぎシーズン真っただ中。
玉ねぎ畑では、たくさんの人や収穫する機械、車などなど、みんな総出で収穫作業です。

収穫されている玉ねぎも早生(わせ)玉ねぎや中生(なかて)玉ねぎに移ってきました。
(前回のブログで分類を書きましたので、「極早生」「早生」「中生」「晩生」って何だ?って思ったら、こちらを読み返してみてください。)

今回は少し遅くなりましたが早生(わせ)玉ねぎについて。

早生といえば

近くの産直に行ってみると、やっぱり玉ねぎでいっぱい

南あわじの産直

写真にはありませんが、この手前には、段ボールでたくさん積まれています。

淡路島のたまねぎ  淡路島のたまねぎ 淡路島のたまねぎ  淡路島のたまねぎ

そのなかで、売っている玉ねぎはほぼすべて「七宝」
そう、淡路島の早生たまねぎと言えば、「七宝」なのです。

 

七宝って

正確には株式会社七宝という会社が育成している「七宝早生7号」という品種です。
最近、兵庫県が発行した「淡路島たまねぎの教科書」によると、以下のようにかなり詳しく書かれております。

たまねぎの教科書

淡路島たまねぎの教科書(兵庫県 淡路県民局 洲本農林水産振興事務所 南淡路農業改良普及センター)
いろいろとマニアックなことが書いてあり、読み応えのある冊子です。おススメです。

七宝早生7号(株式会社七宝 育成) ♀貝塚早生×静岡早生 ♂愛知早生×今井早生 
肥大性に優れ、抽台・分球が少なく耐病性がある品種を選抜し、交配したF1を西南暖地に適した品種として1992年に育成。

 短期貯蔵に適した甲高の早生品種です。一般に4月から5月にかけて収穫されるたまねぎは「新たまねぎ」と呼ばれています。
 色は白く、肉質が柔らかくジューシーです。辛み成分のアリシンが少ないので、サラダなど生食用に適しています。傷つきやすく日持ちしないので期間限定のたまねぎです。
引用:淡路島たまねぎの教科書(兵庫県 淡路県民局 洲本農林水産振興事務所 南淡路農業改良普及センター)p.8

 

そんな七宝。

生産者である淡路島の農家さんからは「やっぱり七宝。七宝がおいしい!」というお話をよく聞きます。実は、七宝はこの時期限定の農家さんおススメの玉ねぎなのです。

ただ、中生や晩生のたまねぎと比べて貯蔵性が良くないなどの理由から、この時期しか市場には出回らず、この期を逃すと、「七宝」を食べる機会がぐっと減ってしまいます。

私の経験では、日陰で1ヵ月くらいは平気だったような気がしますが、通常、玉ねぎは何カ月も日持するものなので、それに比べると日持ちしないのかもしれないですね。そして、昨日も産直でお客さんのご夫婦が「「早めに食べてください」って書いているけど、どれくらい日持するのかわからない。」と話しておりました。

極早生と比べてみました。

まずは見た目。

玉ねぎ比較

左:極早生(濱の宝)右:早生(七宝)

玉ねぎ比較

左:極早生(濱の宝)右:早生(七宝)

どうでしょう?違いがわかるでしょうか?

まず、首のところが太さが違いますね。早生のたまねぎ(右側)はしっかりと首が締まっていますね。私も見比べてみてはじめて気が付きました。
そして、膨らみ方も少し違います。これはきっと品種の影響だと思います。(たまねぎは品種によって球のカタチが違ってきます。)

真っ二つにしたときは

玉ねぎ比較

左:極早生(濱の宝)右:早生(七宝)

スマホのカメラなのでわかりにくいかもしれませんが、極早生たまねぎ(左側)はが少し透明っぽく、みずみずしい。一方で、早生たまねぎ(右側)は、真っ白でずっしりとした感じです。

そして、スライスとその味わい

玉ねぎスライス

繊維を断ち切る方向にスライスしました。

極早生のたまねぎのときは、切ったあとすぐに食べても、みずみずしくて、辛みがほとんどなく、水分を甘味を感じることができました。
一方で、早生たまねぎの場合は、すぐに食べると、甘味のあとに辛みと玉ねぎのツーンとした香り、玉ねぎっぽさがあります。(私が生玉ねぎがあまり得意じゃないので、敏感なだけかもしれませんが。)

少し空気にさらしてあげたりすることで、辛みが飛んで、甘味を感じやすくなるので、ややマイルドになります。玉ねぎっぽさ残る玉ねぎスライスが好きな人にはこの七宝はもってこいだと思います。

おススメの食べ方

もちろん、スライスして生で食べるのもよいですが、個人的には、炒め物や玉ねぎフライ、かき揚げなど、火を通してあげることで、甘味がしっかりと引き立ち美味しくなります。BBQもよいですね。

玉ねぎフライ  BBQ

 

次回は

今回は早生玉ねぎについてご紹介しました。
「淡路島玉ねぎ」と言っても、たくさんの品種があり、時期によって味わいや特徴も様々です。

玉ねぎシーズンがピークを迎えている淡路島。
今後は中生や晩生のたまねぎ、淡路島にしかない農民車のことや玉ねぎ小屋のことなど。
データも交えて、気ままに書いていこうと思います。

 

日本のはちみつの流通量~統計データから学ぶ~

今週は日本でのはちみつ流通量について、国が出している統計データから見ていきたいと思います。

養蜂業の分類

その前に、養蜂業は、日本標準産業分類の中では、
大分類:A農業,林業
中分類:01農業
小分類:012畜産農業
細分類:0129その他の畜産農業
に属します。

そのため、養蜂やはちみつのデータについては、毎年、農林水産省が「養蜂をめぐる情勢」というものをまとめており、そこから様々なことが見えてきます。

ちなみに、この日本標準産業分類は、国が公的統計の作成に当たり産業別に表示するための分類です。複数の事業にまたがっている場合、例えば、養蜂をして、はちみつを販売している場合は、「E製造業」に属したり、「I卸売業,小売業」に属する場合もあります。このあたりは、特に厳しい縛りはないみたいです。

蜂蜜の流通

こちらのデータをご覧ください。

養蜂をめぐる情勢

出典:農林水産省 養蜂をめぐる情勢(平成28年10月)

 

実は、日本で使われているはちみつの約93%は輸入であり、国産蜂蜜はたった7%しかないのです…。実はこんな現状なのです。家庭用でも国産はたった13%であり、87%は輸入蜂蜜。そういえば、スーパーなど、お店で並んでいるもののほとんどは海外のものですからね。

ちなみに、平成27年度の日本の食料自給率はカロリーベースで39%、生産量ベースで66%です。こちらを参照
そして、小麦は、国産は約13%、輸入が約87%。砂糖は国産が約40%、輸入が約60%。

内訳を見やすくするとこんな感じになります。

輸入蜂蜜の約73%は中国産であり、そのあと、アルゼンチン産やカナダ産など。ヨーロッパ産はちみつとして日本で有名なハンガリー産はちみつ。あとは、近年人気が高いマヌカハニーがあるニュージーランド産はちみつ。

 

ここからわかること

あと、このデータからわかることとしては、
・国産蜂蜜のほとんどすべてが家庭用であるということ。
・輸入蜂蜜は家庭用が55%、業務・加工用が45%であるということ。

この業務・加工用のはちみつというのは、主には、以前のコラム(蜂蜜って何?~日本の蜂蜜には規格がある①~)で書いた精製はちみつとして、パンやドリンクなどに使われているのだと思います。

輸入量と消費量の推移

もう少し数字を見ていきましょう。

国産蜂蜜がたった7%しかないということについて。統計データから過去にさかのぼっていくと、昭和60年までは、自給率(=国産生産量/消費量)は20.5%あったのに、平成になってからの自給率は7%前後を推移していることがわかります。

蜂蜜の生産量、輸入量及び消費量

出典:農林水産省 養蜂をめぐる情勢(平成28年10月)

 

自給率が減少した理由としては、昭和60年と平成7年を比べると、
・中国産のはちみつの輸入量が約2倍になっていること。
(昭和60年:18,143t → 平成7年:35,138t)

・国内の生産量が半分以下になったこと。
(昭和60年:7,225t → 平成7年:3,362t)

・消費量が約7,000t増加したこと。
(昭和60年:35,272t → 平成7年:42,485t)

が考えらえます。

この急激な輸入量の増加と、国内生産量の減少については、何か理由がありそうな気がします。そして、これらの増減を考慮しても、中国からの輸入量が急激に増え過ぎじゃないかと思いますがどうしてでしょうね。私自身、まだまだ勉強不足です。

なぜ、消費量と輸入量が増えたんでしょうかね?
根拠はないのですが、今、私が考えられることとしては、高齢化・後継者不足などによる国内養蜂家の減少、人口が増加していた時代であり需要が増えたということ、健康志向のはちみつブームでで需要が増えたこと、日本企業の中国進出などかなと思います。また、時代背景などを含めて、調査していきたいと思います。(例えば、複合的な要因で蜂蜜入りの加工品(パンやドリンクなど)が増えたとか。)

また、平成に入ってからは輸入蜂蜜のほとんどが中国産であったことがわかります。最近になって年々中国からの輸入割合が下がってきていますが、日本でのはちみつの需要量が減っているので、相関関係がありそうです。
あとは、ここには載っていませんが、マヌカハニーの輸入量が年々少しずつ増加しており、日本の中でのはちみつ消費の文化が健康や安心・安全、高級志向になっていることもあるのかもしれませんね。

データをみて想像を膨らませる

今週は、農林水産省のデータからわかることを少しだけ書きました。

この「養蜂をめぐる情勢」には、日本の養蜂やはちみつに関する様々なデータが書かれており、とても興味深い内容なのです。他のところの考察については、またの機会に詳しく書きます。

このような数字を見ながら、
なぜ数字が増えたんだろう?
なぜ、前年と違うんだろう?
このデータはどこからきているんだろう?
などなど。

きっといろんな要因があるんだと思います。その、いろんななぜ?について、その理由を書籍やネットで探ってみたり。当時の時代背景やブーム、人口問題、業界の変化、輸入規制などから想像したり。そういうことまで考えながら、統計を見ていると面白いなーって思うのです。

と、今回はちょっと理系っぽくなってみました。ゆきおでした。

春の蜜源

季節ごとに味も香りも異なる日本みつばちの蜂蜜。

巣から半径1〜2㎞を飛び回り、
その季節に咲いている野山の花から蜜を集めてくるからこその味わいと見た目が、心にも美味しい。
特に春の蜜は、集められてきたばかりのフレッシュで尖った花の香りと、透き通るような柔らかさの蜜の色合いが特徴的。
そんな蜂蜜の話をしていると、よく「何のお花の蜜ですか?」と聞かれる。

島の野山の季節のお花です、と答えているけれど
そう、季節ごとにいろいろなお花が咲いているんです。
ということで、今回は春から初夏の野山の花々を紹介します。

巣箱の周辺にある花々

①シロツメクサ

シロツメクサ
マメ科/シャジクソウ属

②野アザミ

群生するアザミたち。キク科/アザミ属

③イタドリ

イタドリ。これも実は白く可憐な花がたくさんついて、蜜源となるそうな。撮影時はまだ花はついておらず。

ポキリと折って、皮をむいて食べてみる。久しぶりの酸味が口に広がる。昔はよく食べたりしたわ、とユキオ父も楽しそう。

(ただしイタドリは初夏に生えるものの、花が咲くのは秋。
 というわけで、秋の蜜源植物。:2017年5月31日追記。
 宮岡さん、教えてくれてありがとうございます。)

④野いちご

野いちごの群れ。白い花が咲いていた気がするけれど、撮り忘れ。

甘酸っぱい、鼻を抜ける爽やかな甘み。

⑤アカバナユウゲショウ

アカバナユウゲショウ、という名前の花。もともとはアメリカ原産で、明治時代に観賞用として日本に持ち込まれ、現在は野生化。道端や空き地など、あちこちで見られるそうな。

⑥白い花いろいろ(名前を探してみるも、多すぎて特定できず)

⑦なんだろう

ちいさな青い花をたくさんつけている

 

⑧ノビル

この強そうなのは…ノビル!玉ねぎの花に似ている。この辺りではあちこちに群生している。もっと早い時期に抜いて、ネギやらっきょのように使うと美味しい。

⑨桜

桜

⑩梅

梅とみつばち

11.ビワ

野生化していたりもするビワ

いろいろな花から蜜を集める日本みつばち

アカシアやレンゲ、サクラなど、単一の花の蜜を集めてくる傾向が強いのが西洋ミツバチ。
一方、日本みつばちは、いろいろな花から蜜を集めてくる性質がある。
ミツバチは蜜源を見つけると、巣に戻り、いかに素晴らしい蜜源であったかを「8の字ダンス(尻振りダンス)」によって仲間に伝える。西洋ミツバチはそれに従う者が多いものの、日本みつばちは従う者がどうも少ないのか、それぞれ花を探して飛び立つ傾向にあるらしい。そのため、日本みつばちの蜜は、巣の半径1〜2㎞の地域に咲く花々の蜜が合わさったものであり、香りも味わいも地域によって、群れによって異なってくるのが楽しい。

(菅原、2005)

蜂にも味の好みがあるらしい

訪れる花の種類が西洋ミツバチと日本みつばちで異なるという。
兵庫農大(現在の神戸大学農学部)の宮本教授の研究によると、日本みつばちは西洋ミツバチと比べて、野生の草木や、山地に見られる植物を好む傾向にあると報告されている(宮本、1958)。

(菅原、2005)

 

ということで、ここまで。

山は本当に楽しい。季節ごとにいろいろな植物が顔を出しているし、山菜や食べられる野草も(そんなに知らないけれど)あちこちに生えている。
山によって、ここで紹介した植物が生えていないところもあるし、
ここで紹介していない植物があるところもある。
季節ごとに、咲く花は本当にいろいろ。
そんないろいろ雑多に生えている様子を見ていると、生態系が豊かに守られているのかな、なんてちょっと安心したり。
みつばちの立場から見ても、年間を通じて様々な花が咲くことは重要。どんなにたくさん咲いても、一年の一部の時期だけに咲くのでは生きていけない。特に秋にしっかり貯蜜できるかが、冬を越えられるかどうかの分かれ道。
そうやって見てみると、このまちの環境はみつばちにもいいんだろうなぁ、なんて想像する。
淡路島は「花とミルクとオレンジの島」なんていうキャッチコピーも持っていたんだそう。温暖で、花も柑橘もこのまちでは育ちやすい。
酪農もしていて、その堆肥を使って循環する農業がされてきた島なんだって。
時代の流れとともに、島も変わってきたのかもしれないけれど、やっぱり温暖で、花が豊富なのは変わりないのかもしれない。
そうだといいな。
さて、春の蜜源はここまで。
今後は、夏や秋もその時々で野山に生えている花々を紹介していければと思っています。

参考文献
・菅原道夫、2005、『ミツバチ学』、東海大学出版会
・宮本セツ、1958、本産花蜂の生態学的研究 (X) : 日本および西洋蜜蜂間における花との関係の相違、兵庫農科大学研究報告農業生物学編 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81006103.pdf

蜂球のなか。

実は、昨日の午前中も分蜂群を目の当たりにしまして。
蜂の数と勢いに圧倒されました。
そんなこんなで、今回も分蜂について書いていきます。

前回のブログでは、分蜂した群れが、巣箱に入っていく状態であったのですが、今回は、分蜂した直後で、蜂球を作るときの様子です。

 

分蜂の直前

朝から巣のまわりでは、たくさんの働き蜂やオスバチがブーンブーンと巣の近くを行き来しています。

(その時の写真は撮り忘れ)

 

この分蜂の予行練習を何度か繰り返えすそうで。
待っている方は、ドキドキしながら、「いつでるのまだ?」って感じで見守ります。

いよいよ飛び立つ

そこから、数分後。

みんなが一斉に空に飛び立って行きます。

(この瞬間を見逃してしまいまして…。あと10分、その場に残っていれば見れたのに…。耐えられず、農作業に行きまして…。残念。)

そして、空が

帰ってきたら、空がとても賑やかに。

上空は、たくさんのみつばちたち。

分蜂した空

これすべて蜂です

ぐるぐると遠くに行くわけではなく、近くを旋回しています。

 

近くの木の枝に

しばらくしたら、近くにあった木の枝に蜂たちが集まってきました。

きっと、ここに女王蜂が止まったのでしょう。

女王蜂が止まったところに働き蜂たちが集まってきて、球を作ってきます。

分蜂した空

 

動画はこちら

 

蜂球

そして、数分で、どんどん分蜂した群れが集まってきて、球がどんどん大きくなってきました。ある程度集まるとみつばちたちも落ち着いてきてきました。

 

分蜂蜂球

 

近づいても、はちたちは何もしてきません。
気にも留めてくれません。

 

やってみたかったこと

近くに低めの木に蜂球ができまして、こんなチャンスはめったにない。

分蜂した木

 

ということで、一度はやってみたかったことを。

蜂球の中に、指をいれてみたいということ。

(前回も少し書きましたが、)
分蜂をしたときのみつばちたち、いつ新居が決まるかわからないということもあり、お腹ににたくさんの蜜を抱えています。そのため、よほどのことがない限り、刺されることはありません。

ドキドキしながら、いざ!!

分蜂 触る

暖かい!!
そして、蜂たちがブルブルとした振動が伝わってきます。

ついてきた蜂たち

ぶら下がって、なかなか離れない。おとなしくかわいいみつばちたち。

ゆっくりと元の場所に戻してあげます。

ドキドキしましたが、何事もなく。

分蜂 触る

ようこも指を入れまして。
うちの猫を触っているみたいという感想で。

 

ということで、

今日は分蜂をより近くで体験。

みつばちたちは人間のことはあまり気にも留めずという感じでしょうかね。

ただ、今回は無事でしたが、必ずしも安全とはいません。
私事ではありますが、この後、いろいろありましてみつばちさんに下唇を刺されました。
今は唇がパンパンです。

試すときは、くれぐれもご注意下さい。

ちなみに、元々いた巣から離れて分蜂についていった働き蜂が、元の巣箱に戻ろうとすると、元の巣の入り口で門番のみつばちたちに殺されてしまうそうです。

「もうあいつらは出ていったから、別の群れだ!!やっちまえー!!」
みたいな。

そういう現場も何度か目の当たりにしております。

直前まで、一緒に暮らしていた仲間なんだから、入れてあげてもいいのにねー。
というか、どうやって見分けているんだろうって思います。

分蜂群がそのまま巣箱に!

分蜂シーズンも終盤になってきました。

毎日、いろんな山を行ったり来たりというのもひと段落。

そんななか、先日、
分蜂群が巣箱に入っていく瞬間に立ち会うことができました。

最初、山に見回りに行ったとき、
置いている空の巣箱のまわりには、いつもより多めの偵察隊のみつばちたち。
行ったり来たりで、巣箱の中をみていました。

 

そして、しばらくしたら、
突然、偵察のみつばちたちが全くいなくなってしまったのです。

偵察だけして、別のところに行ったのかな?とか
ちょっとがっかりしつつも。

 

その後、しばらく様子を見ていると。

上空から「ブーン」「ブーン」という大きな音が。

ふと、空を見上げると、たくさんのみつばち

そのまま数分で、みつばちたちの群れは巣箱に吸い込まれていきました。

 

 

初めて分蜂した群れが巣に入っていく瞬間をこの目で見ることができました。

私たち2人は「すげー」としか言葉が出なかったです。

はちみつとボツリヌス菌(後編)

自然界最強を誇るボツリヌス菌、今回はその後編をお届けします。

地上最強の菌、ボツリヌス

乳児以外は大丈夫?乳児はなぜ罹る?

はちみつを1歳未満の乳児が食べないように、いろいろな所に注意書きがあります。
しかし、乳児以外は食べても大丈夫なのでしょうか?

食べてもいいの?

実は、ボツリヌス菌による中毒症状は、症状の現れ方や経過によって、

食餌性ボツリヌス症(食中毒)」、
創傷ボツリヌス症」、
乳児ボツリヌス症」、
成人腸管定着型ボツリヌス症」の5つに分けられるそう。

名前から想像できるように、はちみつなどを介してボツリヌス菌を乳児が摂取した際に発症するのが「乳児ボツリヌス症」です。
また、乳児でなくとも、ボツリヌス菌の産出した毒素に汚染された食べ物を摂取することで発症したり、傷口から菌が侵入し、皮下組織で増殖・毒素を産出することで中毒症状は起こります。

では、はちみつを食べると必ず中毒症状が起きるのか?
答えは「その場合もあるが、健常な小児及び成人であれば中毒症状は起こらない」というのが正しいでしょう。
その理由を端的に言えば、腸内細菌の働きにあります。
通常、腸内細菌のバランス(腸内フローラ)が健常に保たれていれば、芽胞が混入したものを食べても、芽胞の発芽や増殖を防ぐことができ、毒素の産出も防ぐことができます(ただし、すでに芽胞の状態ではなく、菌として毒素を産出している段階のものを食べた場合には防げません)。

腸内フローラ(『もやしもん1巻』より)

しかし、乳児ボツリヌス症と腸管定着型ボツリヌス症のように、腸内細菌のバランス形成が未発達な乳児や、小児や成人であっても外科手術や抗菌薬の投与などで腸内細菌の破壊や菌交代などが起こっている場合には、ボツリヌス菌の芽胞が発芽し毒素の産出が起こる場合があるのだそう。

どんな症状が出るの?

ボツリヌス菌の算出する毒素は、神経機能に作用し、弛緩性麻痺を起こす働きを持つ。
それによって、嚥下困難や呼吸麻痺などを引き起こし、最悪の場合死亡することもあるのだとか。。。

国立感染症研究所 感染症情報センターによると、

食餌性ボツリヌス症:いわゆるボツリヌス食中毒であり、ボツリヌス毒素に汚染された食品を摂取することによって発病する。多くの患者は初期症状で視力の低下、瞳孔散大、複視、眼瞼下垂、対光反射低下などの視覚異常を訴えるとともに、口内の渇き、嗄声、腹部の膨満感、吐き気、嘔吐、歩行異常、嚥下困難、便秘、全身の筋弛緩などの症状を呈する。重症の場合は呼吸筋の麻痺による呼吸不全で致命的となる。原因食品の摂取から発病までの時間は摂取された毒素の量と型によるが、数時間~2日程度である。強力な毒素が原因であるため致死率は他の食中毒に比べてかなり高い(10~20%)。

乳児ボツリヌス症:生後1歳未満の乳児が芽胞を経口摂取することによって、腸管内でボツリヌス菌の発芽・増殖がおこり、産生された毒素によって発症する感染型の疾患である。1歳未満の乳児が発症するのは、腸内細菌叢が成人とは異なりボツリヌス菌の定着と増殖がおこりやすいためと考えられている。症状は便秘傾向にはじまり、全身の筋力低下をきたす。泣き声や乳を吸う力が弱まり、頸部筋肉の弛緩によって頭部を支えられなくなる。顔面は無表情になり、散瞳、眼瞼下垂、対光反射の緩慢などボツリヌス食中毒と同様な症状が現れる。呼吸障害が生じ重症化すると死に至ることもあるが、乳児ボツリヌス症の致死率は食中毒に比べると低く2%程度である。

創傷ボツリヌス症:患者の創傷部位でボツリヌス菌の芽胞が発芽し、産生された毒素により中毒症状がおきる。米国では麻薬常用者の注射痕からボツリヌス菌の感染がおきた例などがしばしば報告されている(MMWR 52: 885-886, 2003)。

成人腸管定着ボツリヌス症:1歳以上の子供と成人でも乳児ボツリヌス症と同様に、腸管内でボツリヌス菌が定着、増殖して発病することが報告されている。発症は外科手術や抗菌薬の投与によって患者の腸内細菌叢の破壊や菌交代現象がおこっている場合に限られる。

(出典:国立感染症研究所 感染症情報センター、「ボツリヌス症 2008年1月現在」

それぞれ、こんな症状が出るものみたいですね。

 

日本ではちみつを媒介とした感染事例

日本では、1986年に国内初の「乳児ボツリヌス症」が確認されたりしているようです。
乳児ボツリヌス症は、1990年までははちみつを原因とするものが大半だったものの、乳児がはちみつを摂取することの危険性が徐々に周知されていき、以降は、ほぼ、はちみつ以外の感染ルートによるものになっているようです。
乳児ボツリヌス症の発生件数自体は、1984年〜2008年の間に24件。
そのうち、2005年以降は毎年2件づつの発生にとどまっているのだとか。
(アメリカの場合は年間約100件発症し、そのうち7割が乳児ボツリヌス症であることを思うと、日本では発生は稀だと言えますね)

はちみつ以外の感染ルートだと、1984年に熊本県で製造された辛子蓮根でボツリヌス菌が増殖していて大事件になったりしています(食餌性ボツリヌス症)。

辛子蓮根を製造する際、殺菌しきれなかった菌が、密封された環境の中で増殖した事例

また、創傷ボツリヌ症と成人腸管ボツリヌス症は日本での発症事例は確認されていないようです。

医療現場でも使われるボツリヌス菌

そんな恐ろしいボツリヌス菌ですが、その特徴を把握し、利活用しようというのが医学・科学の世界。

例えば、美容外科で見かけることもある、ボツリヌス毒素の注射(ボトックス注射)。
ボツリヌス菌そのものを注射するのではなく、ボツリヌス菌がつくるタンパク質(ボツリヌストキシン)を薬として使えるように加工したものを注射します。
本格的に医学で応用され始めたのは1980年代ということで、もう40年近くになるわけですね。
ボツリヌス毒素の持つ、筋肉の神経に作用し麻痺させ弛緩させる特性を利用し、過剰な緊張によって固くなってしまった筋肉を柔らかく動かしやすくする効果や、皺取り効果などが期待出来るのだそう。

(漫画「もやしもん」では樹教授がボトックス注射でつるつる卵肌になってましたね。。)

ということで

さて、知れば知るほど恐ろしいボツリヌス菌。
だけど日常の中で感染する恐れはとっても稀なもののようです。

どこにでもいて、好むと好まざるとに関わらず人類と密接な付き合いをしてきた菌たち。
時には彼らの働きに注意し、時には恵みを享受して、彼らとうまく付き合っていきたいな。
今回はそんなボツリヌス菌の話、後編でした。

参考文献及びURL
・石川雅之、『もやしもん』
・ECOLAB http://ja-jp.ecolab.com
・外務省、「UNSCOM/UNMOVIC報告による主なイラクの大量破壊兵器疑惑」 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/gunso/pdfs/iraq.pdf

・輝城会 沼田クリニック http://kijoukai-gr.jp/nc/knowledge/botox.html
・国立感染症研究所 感染症情報センター、「ボツリヌス症 2008年1月現在」 http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/336/tpc336-j.html
「ボツリヌス菌毒素の構造と作用」http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/336/dj3361.html
・国立感染症研究所 レファレンス委員会 地方衛生研究所全国協議会、「ボツリヌス症」、2012 http://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/botulism121207.pdf

・内村眞佐子、三瓶憲一、小岩井健司、矢崎広久(1987)「乳児ボツリヌス症の原因食品に関する調査」、千葉県衛研報告第11号 http://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/eiseikenkyuu/kennkyuuhoukoku/documents/11-p39.pdf
・役に立つ薬の情報~専門薬学 http://kusuri-jouhou.com/microbe/saikin.html
・山口県感染症情報センター http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5/syoudoku_4-8.html