みつばち社会~女王蜂⑤女王不在の無王群〜

女王蜂シリーズもなんと今回で5回目。
今回は無王群についてのお話です。

無王群とは

これまで、何度も出てきているように、1つの群れには、女王蜂が1匹だけ。
群れの中は、あとは、たくさんの働き蜂と全体の1割程度の雄蜂で構成されています。

ただ、何らかの理由で、そのたった1匹しかいない女王蜂がいなくなってしまった群れを、その名のとおり無王群と言います。

いつ、女王はいなくなるの・・・?

前回のコラムで書いたように、女王蜂は、生きている間はほぼ巣の中で、群れの反映のために卵を産み続けます。

では、どの段階でいなくなってしまうことがあるのか??

これまでのコラムの中で、女王蜂が生まれてから行動を思い返してみてください。

女王が外に出ていくタイミングを。

 

 

そう、新しく生まれてきた女王が交尾のために空へ出かけたときなのです。
(他にもいなくなるタイミングがあるかもしれませんが、調べた限りはこのタイミングがほぼ要因)

新しい女王蜂が羽化して約1週間。お付きの働き蜂(20匹程度)に護衛された女王は交尾のため、生まれて初めて空に飛び立ちます。(詳しくはこちらに書いています。)

そして、実は、その空は危険な場所でもあるのです。

これを人間に例えると、箱入りで育ってきたお嬢様がお付きの人を20人引き連れて初めてまちに行って、お目当ての男性を探しに行っているっていう感じですね。しかし、お付きの人がボディーガードの役割ではなくて、何かあっても見ているだけであり、そして、弱っちいのです。こんんかなんじで、そりゃ、危険ですよね。

交尾のための雄蜂たちがいるところに向かっているのですが、危険な空では、突然、鳥に襲われて、食べられてしまい命を失うことも…。他にも何らかの外的要因があって女王が死んでしまうことがあるそうです。

蜜蜂と鳥

きっとこんなイメージ

 

女王がいなくなるということは。

交尾飛行で3日程度で巣箱に帰ってくるはずの女王が帰ってこない。群れの中では大問題。群れの存続危機なのです!!

分蜂直後の群れは、巣の中に卵もありません。もし、巣の中に卵があれば、女王蜂が返ってこないことを知った働き蜂たちが変成王台を作って、これから生まれてくるだろう幼虫にローヤルゼリーを与えて、新しい女王蜂に仕立て上げることもできるのですが、そういうことも難しいのです。(ちなみに無王群になると、セイヨウミツバチはこのような変成王台を作るのですが、日本みつばちは変成王台ができにくいそうです。)

そして、4~5日すると、雌である働き蜂たちが産卵を始めるのです。

通常であれば、女王蜂のフェロモンで産卵を抑制されているのですが、女王蜂がいないため、そのフェロモンの効果がなくります。そうすると、働き蜂が産卵できる体になり、群れの存続のため、産卵をするのです。(女王のフェロモンについてのコラムはこちら

そして、なんと、いつも参考にしている文献によると、産卵する働き蜂は腹部にある黄色のバンドが消失して黒く光るようになるそうです。見た目まで変わってしまうなんて…。

働き蜂が産む卵

通常、女王蜂は、巣房のなかに、卵を1つ1つ産みつけるのに対して、働き蜂が産卵した場合は、巣房の中に数個から数十個の卵を産み付けるそうです。

巣房

 

そして、何より、働き蜂は交尾していないため、無精卵しか産むことができないのです。
無精卵からは雄蜂しか生まれません。

ということは、巣房には1個ではなく、たくさんの卵なので、そこから、小さな雄蜂が羽化するのです。

 

群れの中では、小さな雄蜂が増えるが、働き蜂たちが増えずに減っていく一方。

それでも、雄蜂は特に何もしない。働き蜂は働くけども、個体数は減っていく。

そこからはご想像できるかと思いますが、最終的には消滅するしかないのです。

悲しいかな、女王がいなくなった群れは自然の中では生きていけないのです。

(私は詳しくは知らないのですが、セイヨウミツバチの場合は対策などがあるそうです。)

今回のまとめ

女王不在の無王群について書きました。

無王群になる要因はほかにもあるようですが、様々な書籍やネットの情報を調べてみた結果、鳥に食べられる以外の要因については、詳しくは書かれていませんでした。きっと春の時期なので、スズメバチもそんなにいないし、蜘蛛の巣あまりないし、ほかにはどういう要因なのかな~って考えてみましたが、まだまだ勉強不足で私にはよくわかりませんでした。

あとは、人間世界に例えてみてみるのも面白いですね。
無王群の最期については、男は増えても何もしないので、男だけでは生きられない…。そんな社会なのです。

参考文献
吉田忠晴、2000、『ニホンミツバチの飼育法と生態』、玉川大学出版部
丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版

地域の草刈りへ~神代浦壁~

今日も地域のおじいちゃんたちと草刈り。
朝7時の日差しが強くないうちに始めます。ため池の近くの斜面などを約2時間。
大人数なので、すごい速さで草刈りが進んでいきます。

草刈り

 

ため池近くの畦や草むらの草刈りを終え、ふと、みなさんの草刈り機を見てみると、草刈り機にはたくさんの釣り糸が絡まっていました。
実は、この地域は昔から休日になるとブラックバス釣りなどでたくさんの人が来ます。
(今日も朝9時にはすでに「なにわ」ナンバーの車など淡路島島外の車が5台くらいありました。)

あるおじいちゃんが
「釣りをするのはええんやけど、マナーは守ってもらわんとな。釣りやっとる人はわしらが草刈りしとることも知らんだろうな」とつぶやいていました。

マナーを守る、ルール守るっていうのは当たり前のこと。そして、もちろん環境よくない。それに加えて、釣り糸は切れにくいので、絡まったり、引っかかったりと危ないのです。(草刈り機にもよくない。深く絡むと故障の原因に…。)
しっかりと守ってほしいですね。

そして、そして、草刈りの最後はみんなでスイカ。
甘くて冷たいスイカ。体の中に染みこんでいきました。それにしてもこのサイズ。1人1つ、みんなこれを簡単に食べきっていました。私は1つでおなかいっぱいになったのですが、「若いんやから」って言われて、プラス1つ。

草刈り後のスイカ

今日もそんな朝でした。

ちなみに、お昼はみなさんで食事へ。
急遽、一人欠席で、お膳が1つ余っていまして。
「若いんやから」ということで、ここでもプラス1つでした。

みつばち社会~女王蜂④卵を産む〜

さて、今回は女王蜂の重要な仕事「産卵」について見ていきましょう。

前回のコラムで、女王は自身の分泌するフェロモンによって、
群れの他の雌蜂である働き蜂の生殖や産卵を抑制し、
働き蜂としての労働を促すことについて少し触れました。
みつばち社会では基本的に女王だけが卵を産み、群れを大きくする仕事に従事します。

一体どれくらい産んでるの?

女王蜂は、巣房1つにつき1つの卵をせっせと産んでいきます。
その数、1日1000個から2000個。
大きさは約5.5mm、体重に等しい重量の卵を1分間に1〜2個産み続けているという。
人間でいえば1日20人の子供を一夏中産み続けるようなものだそうな。ううむ。

みつばちの卵

見事なハニカム構造と卵

巣房のサイズが産み分けを決める

毎日たくさん産みつけられ、育児係に世話され育っていくみつばちたち。
その大半は働き蜂=メス。
そして生殖のみを担うオスの蜂は群れに10%程度。
この産み分けはどのようにして行われているのかというと、
体(貯精嚢)に蓄えた精子を使うか、使わないかの調整によって行われるのです。
みつばちは、精子を使わない無精卵ではオスが生まれ、有精卵ではメスが生まれる。
そして精子を使う・使わないというのは巣房のサイズによってコントロールされている。
小さめサイズの巣房(約4.7mm)には、女王蜂が腰を曲げるようにして産みつけ、
大きめサイズの巣房(約5.4mm)には、腰を曲げることなく産みつける。
この、小さな巣房=腰を曲げた方には有精卵(メス)、大きな巣房には無精卵(オス)が生まれることになる。

オスの方が体が大きいため、羽化前の上蓋も膨らんでいる。上蓋が平たい方がメスの巣房。

お付きの者たちによる産卵補助

巣房のサイズによって、産みつける卵の精子の有無が変わり、性別が変わる日本みつばち。
その群れの成員を決定する重要なポイントは巣房のサイズ、
そしてそれを作る作業に従事しているのは働き蜂というわけで、
じわじわと「女王といっても結局のところ、働き蜂にコントロールされておるのでは…」という感じがしているのは私だけではないのでは。
さて、生殖のための飛行の際、お付きの者たちに付き添われていた女王蜂ですが、
巣房に産みつける際にも世話係の働き蜂たちが活躍します。
女王は産卵時、巣房に下半身の先端を差し入れます。
その際、お付きの働き蜂たちは、女王が巣房へと正確に差し入れることができるように、サポートするのです。

「オーライ、オーライ!ストーップ!」という感じか?(Jurgen、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』p144を参考に作成)

サポートというと聞こえは良いけれど、
働き蜂に管理されていると言えなくもないような気も。

Jurgen(2010)には、

もし小さな直径の巣房にあたれば雌の個体に育つ受精卵を生み,もし大きな直径の巣房を見つけると雄蜂に育つ未受精卵を産む.数少ない精子の卵への接近を許すか,これを妨げるか調整できる女王バチの正規の仕組みは非常に精度が高いに違いない.しかし,子孫の性を決定しているのは女王バチではなく,それに対する決定は集団が行っている.女王バチは単なる実行器官である.

なんて言われたりしています。

卵巣の数が少ない日本みつばちの女王

日本みつばちの女王蜂の卵巣小菅数(左右に存在する卵巣の合計)は約135本、
一方セイヨウミツバチの女王蜂は約275本。
なんと倍近くの開きがあるわけですね。
この卵巣の数は、産卵数の多さを示しており、
日本みつばちよりもセイヨウミツバチの女王バチの方が産卵数が多いことを示しているのだそう。
また、群れのサイズの違いも、これに起因していると考えられているそうですよ。

ということで

今回は女王蜂の産卵について見ていきました。
生涯せっせと卵を産み続ける女王蜂に、フォローするお付きの働き蜂。
生殖の際にも感じましたが、女王蜂とお供の蜂たちの関係はなんだかとっても人間臭い。
もちろん人とはいろいろ違うんだけど、
一族の繁栄のためにトップ(女王)も補佐役(お付きの働き蜂)も一生懸命なところを見ているとなんだかドラマを感じてしまう筆者なのでした。

参考文献
吉田忠晴、2000、『ニホンミツバチの飼育法と生態』、玉川大学出版部
丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版

みつばち社会~女王蜂③フェロモンでメロメロ~

今回は、女王蜂のフェロモンのお話。

以前、みつばちコラムで、みつばちは「社会性昆虫」であるというお話を書きました。
みつばちたちの社会では、1つの集団を作り、女王蜂が1匹、働き蜂が数千〜数万、生殖の時期には雄蜂が2,000~3,000匹が、階級社会の形成して、維持しているという社会です。これはみつばちのカーストとも呼ばれます。(詳しくは日本みつばちの社会〜プロローグ〜を参照)

この社会を形成して、維持できているのは、女王蜂の大顎線(おおあごせん)というところから分泌される「9-オキソデン酸」を主成分とする女王物質と呼ばれるフェロモンがあるからなのです。

9-オキソデセン酸

学者さんの世界ではこのように示されるそうです。私には、何が何なのか全くわかりません。

 

フェロモンによる影響

この女王物質が働き蜂と雄蜂にそれぞれとても大きな影響を与えます。

働き蜂にはこんな効果が。

●働き蜂の卵巣の発達を抑制する
働き蜂もメスなので卵を産むことができます。ただ、この女王物質によって、卵を産むことができない状態になっています。そして、働き蜂としての労働を促すのだと。
(実は、働き蜂も卵を産む機会があるので、またそれは別の機会にご説明します。)

●王台を作らせないようにする
女王蜂自身が、「私はまだまだ元気だから、新しい女王はいらないよ。」っていうことで。まだ新女王のため王台を作らせないのです。逆に言えば、それは、今の女王がいる群れが安泰っていうことを示しています。

雄蜂には

前回のコラムで書いた空中で雄蜂と交尾に出かけた際に、雄蜂を引き寄せるためのにおい物質として発散して、雄蜂を誘引するための性フェロモンとしての機能もあるそうです。

 

フェロモンはどうやって伝わるの??

女王蜂は常に、たくさんのお付きのみつばちたちに囲まれて暮らしています。そのお付きのみつばちたちが女王の体をなめて、触覚で触れて、女王物質であるフェロモンを受け取ります。

その後、女王フェロモンのついた働き蜂たちが、ほかの働き蜂たちと口移しで蜜を交換したり、接触することで、働き蜂全体にフェロモンが広がっていきます。フェロモンが行き渡ることで、女王蜂の存在やその状態についての情報が伝わっていくのです。

フェロモンの効き目が…

女王蜂も年老いていくと、女王物質が分泌量が少なくなったり、分泌できなくなったりなっていきます。そうなれば、実は、群れのなかでは一大事なのです。

働き蜂たちは女王フェロモンの魔法が解けるのです。魔法が解けた働き蜂たちは、卵の数が少ないことに気づき、このままでは群れ全体が存続の危機であるということに気づくのです。そして、新しい女王を迎えるための王台を作り始めるのです。新しい女王が生まれれば、今いる年老いた女王は追い出されてしまいます…。

また、群が大きくなり過ぎると、群れ全体に女王物質がいきわたらないことがあります。その時もまた、新しい王台ができて、新女王が生まれる前に、現女王は働き蜂を半分連れて、自ら巣を離れていくのです。(分蜂についてはこちら

 

※参考 女王物質(フェロモン)とローヤルゼリーの関係
このページによると、働き蜂が作るローヤルゼリーの中には、女王物質の成分も含まれているということで、女王蜂が出した女王物質は、女王が食べる食事(ローヤルゼリー)を介して、また女王に返送されるということです。女王物質は、女王蜂と働き蜂の間でぐるぐると循環しているそうです。

参考URL:http://www.setsunan.ac.jp/~p-tennen/HTML-file/kenkyu/kenkyu-bottom1/kenkyu1.html

 

これで終わり

今日はフェロモンのお話でした。フェロモンって目に見えないし、どちらかといえば香りの世界が近いかなと思います。ただ、香りであっても、私たちには、みつばちの出しているフェロモンがどんなものなのか、っていうのは感じることはできません。本を片手に、WEBで調べながら、少しでもわかりやすくと思い書いていました。ただ、やっぱりどうしても文字が多くなってしまいます。なので、最後に自作のみつばちのイラストを載せてみました。(このコラムの内容とは関係ありません。)
はち

参考文献
丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版
坂本文夫、2016、『ハチ博士のミツバチコラム』、京都ニホンミツバチ研究所

みつばち社会~女王蜂②最初の仕事~

群れに1匹だけの女王蜂。
生まれる前から、ゆりかごとなる巣房も、与えられる栄養も特別。
特別な彼女には、特別な使命が課せられているのです。
女王の過酷な運命とハードワーカーな生涯を見ていきましょう。

生まれてはじめてのお仕事―死闘―

特別なゆりかご「王台」に産み付けられ、
特別な食事「ローヤルゼリー」を与えられること15日。
いよいよ自分で巣房を破って誕生です。

女王誕生(『みつばちの世界』より引用)

さて、生まれたばかりといっても、ゆっくりしてはいられません。
自分で巣房から出てきたときから、みつばちは、もう一人前。
女王として群れを引っ張っていかねばなりません。
新女王が誕生するときには、母である旧女王は群れの半分の働き蜂と共に去ってしまっているのです。(旧女王の旅立ちは、新女王誕生の前日に行われるのだそう)

残った働き蜂たちは、新女王の誕生を、今か今かと待ち望んでいたのですから、
女王誕生は大変な喜びでしょう。
「女王が誕生したぞ。万歳!」といったところでしょうか。

「誕生したばかりだけれど、女王として頑張ろう」
そう意気込んでまず取り組む仕事は、自分以外の女王候補の抹殺です。(うーむ)
女王は群れに1匹のみ。
しかし、というか、だからこそというべきか、女王候補は複数作られるのです。
旧女王が群れを去ったあと、何かあって新女王が誕生しないとお家の一大事。
とはいえ、女王が何匹も存在するわけにもいきません。
だから、先に生まれた女王は後から出てきうる妹たちが巣房から出てくる前に噛みついて巣房に穴を開け、働き蜂が中から女王候補を引きづり出して噛み殺してしまうわけです。(セイヨウミツバチでは上記のようなことが観察されており、日本みつばちでも穴の開いた王台がたびたび見られるため、同様のことが起きていると考えられます)

とはいえ、もしも、同時に女王が誕生してしまった場合は、そう簡単にはいきません。
互いに死闘を繰り広げ、どちらかが死ぬまで戦いは続きます。
その際に足や羽が傷ついてしまうことも…。

姉妹による死闘(『みつばちの世界』より引用)

しかし群れにとっても大事な女王の体。傷つくのは生産的ではない。
貴重な女王という存在。
そこで抹殺することも死闘も回避する、という策も多々取られるようです。
それは、女王蜂同士の振動による会話によるものだそう。
先に巣房から出た女王は「プゥーと笛を」吹き、そのシグナルによって、次に羽化する女王を助けていた働き蜂は動きを止める。そして次の女王候補は「キィキィ」という答えを返す。そうしたやり取りによって、次の女王は羽化を遅らせ、先に羽化していた女王は群れの3分の2を連れて分蜂する。
そんなやり取りもあるのだとか。

そして交尾のため空へ

無事に巣の中を平定したあとは、いよいよ本業。
女王蜂の重要任務は産卵です。
羽化から約1週間後、14時頃、お付きの働き蜂(20匹程度)に護衛されながら、女王は交尾のため空に飛び立ちます。

女王とお付きの者(『みつばちの世界』より引用)

「婚姻飛行」(あるいは「交尾飛行」とも)と呼ばれる通り、みつばちの交尾は空高く上空で行われます。
女王はここで複数の雄と交尾し、複数の遺伝子をもった精子を持ち帰り、生涯をかけて産卵していきます。
(交尾相手の数は、セイヨウミツバチでは20匹弱、日本みつばちでは10匹くらいと言われたりするものの、正確には不明)

ここでちょっと驚くのですが、みつばちは精子を「貯精嚢」という器官にに貯蔵しておいて、毎回ちょっとづつ使っていくことが可能なんだそう。なんて便利。(しかも男女の産み分けも自由自在)

1匹の雄蜂が渡すことのできる精子の量は最大1100個、
女王蜂の貯精嚢に貯めることができるのは最大600万個。
この貯精嚢に次々と異なる雄蜂の精子が入り、混ざることで遺伝子の多様性も確保されていくことになります。

人間も精子バンクを作って貯蔵したりなど試みてはいますが、みつばちは常温で3年もの期間保存が可能だなんてなかなかすごいなぁと関心してしまいます。

さて、そして、「婚姻飛行」なんてロマンチックな呼び方をされるこの交尾ですが、行われていることはなかなかハード。
オスたちは文字通り、決死の覚悟で交尾に臨みます。
女王蜂は空高く舞いあがり、オスを誘因するフェロモンを放出。オスは引き寄せられるように寄っていき、先を争って女王を捕まえ、交尾をします。
しかし、女王を捕まえたら最後、オスは死ぬまで女王から離れることができません。

オスは生殖器を女王の生殖器に挿入すると、挿入器の内嚢の半分を裏返し、
そして力尽き、マヒ状態になって女王に挿入したままぶら下がる。
女王は自身で腹部筋を収縮させることにより圧を加え、内嚢のもう半分を裏返し、精子を自身の膣に送り込みます。
その圧の強さのあまり、上空でオスがパチンと音を立てて弾けてしまうこともあるのだとか。

パワフル…!

ロマンチックどころではなさそうです。
周りの雄蜂は、目の前でそうした事態が起こっていても、お構いなし。
女王の膣に残った他の雄蜂の生殖器を口で引きずり出し、交尾、というのを次々と繰り返し、女王が「よし、これで帰って産卵に専念するか」となれば終了です。

こうした一連のことは、普通はわずか2〜3分で行われるという(長いと1時間ということもあるようだけれど)。
来た時と同じようにお付きの働き蜂に守られながら戻ってきた女王蜂は、巣の働き蜂に迎えられ、腹部先端に残ったままになっている最後に交尾をした雄の生殖器(「交尾標識」と呼ばれる)を働き蜂に外してもらい、帰巣します。

交尾の標(『みつばちの世界』より引用)

迎え入れられる女王蜂(『みつばちの世界』より引用)

こうして精子を蓄えた女王蜂は、2〜3日後から、群れを増やし、維持していくために卵を産み続けていくわけです。

生涯に約100万個もの卵を産むという女王の平均寿命は平均2〜4年。
約3年程度なので、1年間に30万個と考えると、1日あたり30万÷365日=830個、
しかし、最盛期には1日2000個以上の卵を産むことができるという。
1つ1つの巣房にせっせと生み続ける女王蜂。
想像するだけでなんとも大変そうな。。

ということで

さて、今回は女王蜂のハードな初仕事についての回でした。
卵として生まれてから15日(セイヨウミツバチは16日かかるので、日本みつばちは1日早く羽化する)+羽化して1週間の間に、群れを治めたり交尾を終えたり色々あるわけですね。
なお、お付きのみつばちたちは何をしているのかというと、
交尾に不適格な雄を追い回して近づけないようにする、とか
周囲の環境を熟知しているため外界を知らない女王蜂をリードして道案内することで
不用意に外界を飛ぶ時間を短縮し外敵(鳥によって食べられるなど)から守る、とか
色々な説があるようです。

うーむ、しかし今回は写真が引用ばかりになってしまいました。
イラストとか何かで頑張りたかったものの力及ばず。
次からはその辺もなんとかできればと思いますー。

 

参考文献
吉田忠晴、2000、『ニホンミツバチの飼育法と生態』、玉川大学出版部
丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版

みつばちの卵を見つける

最近は、梅雨っぽい雨や曇りでじめじめした日々が続いています。

そんな梅雨の合間、昨日はめずらしく晴れたので山へ行ってきました。

ミツバチに刺されないようにということとやぶ蚊が多いということで、
長袖、長ズボン、ゴム手袋、頭にはネット付きの帽子。
湿度の高い山の中にいるだけで、汗が止まりません…。
手袋を外した途端に、やぶ蚊に刺されてしまうので、現場の写真が撮れない。

山では、
まずは巣箱の掃除。

底板には、くねくねとスムシが動いていたり、大きな蛾が死んでいたり、
みつばちたちが自分たちで壊した巣のかけらがあったり。
(底板や中蓋の中には、隙間などの見えないところにスムシが潜んでいるので要注意。)

それらを丁寧に取り除いてあげます。

その後、巣箱を持ち上げてみて、どれくらい蜜を集めているのかということを感覚的に感じていきます。継ぎ足しの時期などを頭に入れていきます。

 

そんななか、巣箱の中を掃除しているときに、底板の上に落ちていた巣のかけら。
かたちがあまりに美しかったので、持って帰ってきました。

 

ミツバチの巣 この巣をじっくりと見つめていると、白くて丸くて、卵のようなものが。
みつばちの卵

見えますかね~?この写真の中の、白くて、細長いモノ。
これ、実はみつばちの卵なのです。
サイズは1mm~2mmくらい。

もう、この卵は幼虫に孵ることはないのですが、
本来であれば、卵から19日で幼虫、蛹を経て、羽化して成虫である働き蜂になります。

巣の中では、女王蜂が一日1000個以上の卵を産むと言われています。
そのため、巣の中にはたくさんの卵があるのですが、あまり直接見ることのない貴重なものなのです。

不意に見つかった卵に、ちょっとテンションが上がりました。

 

ちなみに、夕方、ズボンの隙間に蜂が入ってしまい、膝小僧を刺されてしまいました…。