みつばち社会〜働き蜂②体の構造〜

日本みつばち

前回は働き蜂のルックスでした。
今回は、モフモフかわいい働き蜂の体の内側、構造について見ていきましょう!

花蜜の持ち運びに最適な体

体の中はこんな感じ

横から見るとこんな感じ。
基本的に、花の蜜を吸って、持って帰ってきて、内勤の蜂に渡すための体の構造になっています。

◆蜂蜜を貯蔵します

流れとしては
①働き蜂は、花を見つけると、
口吻から長い舌を伸ばして花の蜜を採ります。

②そして、口の筋肉を大きく広げることで減圧状態になり、
たくさんの花蜜が口の中に流れ込むそう。(真空吸引)

③花蜜はさらに奥へと流れ込み、今度は下顎頭腺へ。
下顎頭腺では、花蜜を蜂蜜へと変える酵素が作り出されています。

④そこから、食道、蜜胃へと進み、
巣へと戻った時には、蜜を集めに出かけていた働き蜂(採餌バチ)から、内勤の働き蜂へと口移しで渡されて、貯蔵されていきます。
食道では、入り口から出口まで走る筋肉が収縮することで、花蜜を口から胃まで(吐き戻しの際には胃から口まで)送り込みます。
蜜胃では、花蜜の一時保管が行われており、外で花の蜜を集めて貯めておく他、外勤バチから内勤バチが受け取る際にも蜜胃へと貯めて運んでいきます。

◆足についている「花粉かご」

草地家のみつばち

黄色い花粉団子を足につけた姿が可愛い

足に黄色い花粉を丸々とつけたミツバチを見かけたことがある人も多いのでは?
花粉はミツバチにとって貴重な栄養源。
たんぱく質やミネラル、ビタミンなどを含み、幼虫の成長に欠かせない食べ物です。

働き蜂って、胃には花の蜜を貯め、足には花粉団子をくっつけて朝から夕方まで飛び回るわけですね。

蜂蜜を作るための体

ご覧の通り、ミツバチの体は、蜂蜜を作り巣に貯蔵するための体になっています。
一体どうしてそんな進化をしているのでしょう。

生きていくのに厳しい冬などの季節は、成虫は死に、卵だけが冬を越え、良い季節になれば生まれ、短い生涯を生き、また冬には死ぬ。そんなサイクルで暮らす生き物もあります。

一方、ミツバチは食糧源である花が一時しか咲かない儚いものであるという課題に対して、花蜜を貯蔵できるように蜂蜜へと作り変える能力を手に入れ、越冬することを選びました。

結果として、ミツバチはさながら「蜂蜜製造機」のような体になっているわけです。

ということで

今回は、蜂蜜製造機のようなミツバチの一面を見ていきました。
モフモフ可愛い体の内側にはあんな構造が詰まっていたんですね。
今回は蜜ろうについて触れることができなかったので、その辺りはまた次回!

 

参考文献
フォーガス・チャドウィック、2017、『ミツバチの教科書』、株式会社エクスナレッジ

みつばち社会〜働き蜂①ルックス〜

お花畑やお家の花壇などで、モフモフしてみつばちが飛んできて、体や足に花粉をつけて花から花へ飛び回る。そんな働き蜂たちの仕草を見ていると、なんだかとても癒されますね。

みつばちと花粉

かぼちゃの花に寄ってきたみつばち。足と羽にはたっぷりと花粉。

ということで、6回にわたってお送りした女王蜂シリーズが終わり、今週からは働き蜂について、より深く解像度を上げていきたいと思います。

これまでのコラムで書いたこともありますが、1つの群れの中には、数千~数万匹の働き蜂がいて、門番や世話係り、巣を作ったり、蜜を集めたり、様々な役割があります。
(それぞれの役割はどうやって決まっているのか?ということはまた後日)

今週は、働き蜂のルックスについてみていきます。
(女王蜂の時はシリーズの最後だったのですが、今回は初めに持ってきました。)

働き蜂のルックス

見た目はご覧の通り、全体的にモフモフしています。
イメージをつけやすいように写真とイラストを並べてみました。

昆虫の体の構造である、頭・胸・腹に分かれております。肢は3対で6本、羽は4枚。

そして、このモフモフ。剛毛というそうで、体をクッションのように守り、保温するということだけではないとのこと。例えば、首のまわりをふかふかした毛で覆っているが、これも毛の形をした感覚器(センサー)の一種で、頭にかかる重力の方向を知るのには欠かせないものらしいです※。

みつばちのルックス 働き蜂イラスト

目は3つの単眼、2つの複眼があるそうです。正面から見たときのイメージ図はこちら。

みつばち正面

正面からみたイメージ

それぞれの眼の機能については、きっと調べると面白いと思うのですが、みつばちというか、昆虫のことでマニアックになれそうなので今回は辞めておきます。

日本みつばちとセイヨウミツバチ

2種類のみつばちは全然見た目が違っています。その違いを写真で。

日本みつばちとセイヨウミツバチ 日本みつばちとセイヨウミツバチ

日本みつばちの方が黒っぽくて、セイヨウミツバチの方が黄色みが多いかんじ。
直接、目にしたら、大きさの違いもわかります。

参考までに
日本みつばちは体長10~13mm、体重65mg~90mg
セイヨウミツバチは体長12~14mm、体重80~150mg
と大きさも全然違います。

 

今回は

働き蜂シリーズのイントロダクションとそのルックスでした。

みつばちのルックスについて、写真とイラストを多めに書きました。
写真を多めにしたことで、感覚的に捉えていただきやすいかなと思いまして。

というのは、言い訳です。本当は、みつばちの体の構造とか、どこに蜜を貯めるとか、蜜蝋っていう蝋を体のどの部分から出すとか…もっといろいろ、長めにマニアックにに書いていくつもりだったのですが、いろいろ立て込んでいて手が回らず…。またの機会にします。

※参考文献
尼川タイサク、2013、『マキノの庭のミツバチの国』、西日本出版社
吉田忠晴、2000、『ニホンミツバチの飼育法と生態』、玉川大学出版部

みつばち視察〜朝来市編〜

8月1日~2日にかけての二日間。
兵庫県朝来市と滋賀県東近江市に行き、養蜂に取り組んでいる同年代の方に会いに行ってきました。同年代って少ないので、なんだかうれしいのです。

ということで、朝来市編。

朝来市山東町与布土地区で様々な取り組みをしている西村さん。
そのなかの一つが「与布土みつばちプロジェクト」。
(与布土みつばちプロジェクトのFBページはこちら

まずは、最初に、地域自治協議会の建物へ。
朝来市のこと、与布土のこと、西村さんの取り組みのことなどお話を聞き、そして、養蜂を始めたきっかけやどうやって養蜂ができる場所を見つけたのかなどのご質問もさせていただきました。

そして、午後から現場へ。

山際の段々畑になっている不耕作地を活用して、ヘアリーベッチやひまわりを植えて蜜源づくりに取り組んでいます。このひまわりも一部は地元のこども園のこどもたちと一緒に植えたり、また、子供たちとみつばち観察をやったりと素敵な企画に取り組んでいます。

ヒマワリ畑

幹線道路で、車からはきれいなヒマワリ畑が見えます。

 

ひまわり畑の畦を歩いていると、ひまわりの花によって来るみつばちも。

ヒマワリとみつばち

ヒマワリ畑とセイヨウミツバチ

西村さんは、不耕作地と山の境目にセイヨウミツバチと日本みつばちの両方を飼っており、ほぼ独学で学び、蜂のことを見ながら、トライ&エラーの繰り返しだそうです。

日本みつばちの巣箱は山の木陰など、直接日が当たらないところに置くのですが、この場所は山の中にクマや猪がいるため、山の中に置けないということで、日本みつばちは単管パイプを組んで、日よけネットで囲われています。

養蜂

西村さんの養蜂現場

手作りの重箱式巣箱。今年の分蜂で捕まえたそうな。そして、朝来市は寒いので巣箱の木が厚いとか。

 

日本みつばちの巣箱

説明してくれる西村さん

そのあと、セイヨウミツバチの巣箱も見せていただきました。普段、日本みつばちしか見ない私にとって、セイヨウミツバチはとても新鮮で、そして、みつばちはやっぱり可愛い。見た目は、とても黄色くて、日本みつばちよりもちょっと大き目。

セイヨウミツバチ

セイヨウミツバチの巣箱

セイヨウミツバチ

暑いので外に出ているそうです。

 

日本みつばちと比べて、セイヨウミツバチの方が攻撃的だと言われているのですが、この日はみつばちたちの機嫌がよかったということだそうで、覆面布や手袋をしなくて、そのままで持ち上げても大丈夫でした。

上には蜜で、下は子育て。はっきりとくっきりと分かれていました。ちょっとだけ巣のはちみつをそのままペロリとさせていただきました。

セイヨウミツバチ

養蜂っぽいこのかんじ

女王蜂も見せていただきました。わかりますかね、真ん中にいる少し大きめのシマシマのない蜂です。

セイヨウミツバチの女王蜂

真ん中の大きいのが女王蜂

 

ほんと、いろいろと勉強になりました。

西村さん、ご丁寧にいろんなことを教えていただき、本当にありがとうございました。
今後も情報交換や連携ができたらいいなって思って考え中です。

 

頑張って、東近江市編も書いていきます。

みつばち社会〜女王蜂⑥ルックス〜

女王蜂シリーズ、ついに6回目までやってきました。
ここまで「女王蜂」「女王蜂」と書いてきましたが、
「女王蜂」を見たことはありますか?
働き蜂は、春になるとせっせと花蜜を集めに飛び回るし、
苺ハウスでも働いているので、見たことがある人も多いのではないでしょうか。 

たくさんの栄養を与えられた女王蜂、
きっと働き蜂よりも大きいんだろうな、という想像はできると思います。
まさにその通りなのですが、今回は少し詳しく書いていきます。

働き蜂と比べて大きく、 長身で黒めな女王のルックスに注目です!
と書きたいところですが手持ちの女王蜂の写真を探してみたところ西洋ミツバチの女王と、死んでしまった日本みつばちの女王のみ。
写真はまたいつか掲載したいと思います。。。涙

ルックス

写真を撮れていないので、今回はシルエットで

何万といる群れの中でも一際目を惹く女王蜂。

体の大きさが他の働き蜂と違うのはもちろんですが、
女王蜂の外見で何より特徴的なのは、その腹部。
長くて太い立派な腹部には、1日2000個も卵を産むための産卵器官が備わっており、
交尾を終えて産卵可能な体になった女王蜂の腹部は、未交尾の女王の腹部と随分太さが異なるそう。
また、腹部が細長いのも、卵を産みつける際、巣房に差し込みやすいため。

そして、ミツバチといえば、
針に返しが付いており、相手を刺すとき、針もろとも自身の内臓までもが自分の体から抜けてしまい、死んでしまう儚い生き物。
しかし、女王蜂には針に返しが付いていません。
刺そうと思えば何度でも刺すことができるわけですが、女王が針を使うのは生まれたとき、他の女王候補を殺すときのみ。

すべては群れに1匹のみで、卵を産み続ける使命を持った女王ならではの仕様ですね。
ちなみに、日本みつばちと西洋ミツバチでは、腹部の色が違うので初めてみると感動しますよ。
日本みつばちの女王は腹部が黒く、全体的に黒っぽい印象。
対して西洋ミツバチの女王は黄色やオレンジいろっぽい腹部で、全体的に黄色っぽい華やかな印象。
最近、若手の養蜂家仲間のところへ行った時に西洋ミツバチを見せてもらったのですが、女王蜂が見事なオレンジ色の腹部で、これまで写真などで見ていたもののやはり目の前でみると、随分違うなぁ、と感動でした。

 

みつばちの寸法

さて、今度は数値で見てみましょう。
『ニホンミツバチの飼育法と生態』(吉田,2000)の表を参考に、日本みつばちの女王蜂と働き蜂、雄蜂を比較して見ていきます。

  女王蜂 働き蜂 雄蜂
体長 13~17mm 10~13mm 12~13mm
体重 150~210mg 65~90mg 120mg
卵巣小管数 135 12
生育期間(卵〜成虫) 15日間 19日間 21日間

(『ニホンミツバチの飼育法と生態』(吉田,2000)p.102表1ニホンミツバチとトウヨウミツバチの形態・整理の相違点より一部抜粋)

まず体長、すらりと腹部が長い女王蜂は13~17mm、
働き蜂や雄蜂と比べると1.25~1.5倍程度あります。
女王と出会う機会は多くありませんが、群れの中で動く姿は一際目を引く立派なものです。
体重は、雄蜂と比べると約1.25~1.75倍、働き蜂に至っては約2.3~3.23倍、女王蜂の貫禄が伺えますね。体重増加の速度もすごいものですね。たった5日間で1000倍になっていて、人間に換算すると生後5日の新生児の体重が3.5トンということになるわけです。

早い成長

そんな大きく立派な女王蜂ですが生育期間は雄蜂や働き蜂の4分の3程度。
女王蜂の初仕事の回でも少し触れましたが、女王蜂は15日で羽化するのです。
女王蜂の発生が他に比べて早い理由としては、若い女王蜂間での時間競争のためではないかと言われたりもする。つまり、女王蜂は生まれた時の初仕事として他の女王候補を抹殺するか、働き蜂のいくらかを引き連れて巣別れ(分蜂)するか、という選択を突き付けられる。
そうした中では少しでも早く生まれる方が生き残る上で有利。

でも、そんな生存のために女王が早く生まれるように進化したなんてことあるんでしょうか。
素人の私としては、ずっとローヤルゼリーという特別なエサをもらい続けているから成長も早いんでは?なんて思っちゃいます。どうなんやろ。

ということで

約2ヶ月続いた女王蜂シリーズも、今回で終了!(たぶん)
来週からは新シリーズが始まりますよ。
どうぞお楽しみに。私たちも新たな側面から彼女らの生態に迫るのが楽しみです。

今日はなんの日?83の日!

8月3日といえば、そう、はちみつの日。
みつばちの日(3月8日)があれば、はちみつの日もあるのです。
全日本はちみつ協同組合と、日本養蜂はちみつ協会が1985年に作ったのが始まりだそう。
よく似た名前の団体が仲良く制定するなんて何だか意外。
それはさておき、今日は蜂蜜と日本人との関わりを少しご紹介しましょう。
日本でみつばちのことが史上に出てくるのは『日本書紀』の627年のくだり。養蜂も試みていたようですが、なかなか難しかったようです。その後、奈良時代には三韓からの献上品として記述があったり。
さらに平安時代の日本、蜂蜜は宮中への献上品に使われるような貴重品だったそう。
さらにさらに江戸時代には家康の孫娘「千姫」が嫁入りの際に絹や金百貫などとともに蜂蜜を持参していたとも。

そんな私たちの暮らしと古くから関わってきた蜂蜜、時にはそんな歴史に思いを馳せてパクリと食べるのも良いかもしれませんね。