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Column -コラム-

みつばち社会~女王蜂②最初の仕事~

投稿日:2017年7月5日 更新日:

群れに1匹だけの女王蜂。
生まれる前から、ゆりかごとなる巣房も、与えられる栄養も特別。
特別な彼女には、特別な使命が課せられているのです。
女王の過酷な運命とハードワーカーな生涯を見ていきましょう。

生まれてはじめてのお仕事―死闘―

特別なゆりかご「王台」に産み付けられ、
特別な食事「ローヤルゼリー」を与えられること15日。
いよいよ自分で巣房を破って誕生です。

女王誕生(『みつばちの世界』より引用)

さて、生まれたばかりといっても、ゆっくりしてはいられません。
自分で巣房から出てきたときから、みつばちは、もう一人前。
女王として群れを引っ張っていかねばなりません。
新女王が誕生するときには、母である旧女王は群れの半分の働き蜂と共に去ってしまっているのです。(旧女王の旅立ちは、新女王誕生の前日に行われるのだそう)

残った働き蜂たちは、新女王の誕生を、今か今かと待ち望んでいたのですから、
女王誕生は大変な喜びでしょう。
「女王が誕生したぞ。万歳!」といったところでしょうか。

「誕生したばかりだけれど、女王として頑張ろう」
そう意気込んでまず取り組む仕事は、自分以外の女王候補の抹殺です。(うーむ)
女王は群れに1匹のみ。
しかし、というか、だからこそというべきか、女王候補は複数作られるのです。
旧女王が群れを去ったあと、何かあって新女王が誕生しないとお家の一大事。
とはいえ、女王が何匹も存在するわけにもいきません。
だから、先に生まれた女王は後から出てきうる妹たちが巣房から出てくる前に噛みついて巣房に穴を開け、働き蜂が中から女王候補を引きづり出して噛み殺してしまうわけです。(セイヨウミツバチでは上記のようなことが観察されており、日本みつばちでも穴の開いた王台がたびたび見られるため、同様のことが起きていると考えられます)

とはいえ、もしも、同時に女王が誕生してしまった場合は、そう簡単にはいきません。
互いに死闘を繰り広げ、どちらかが死ぬまで戦いは続きます。
その際に足や羽が傷ついてしまうことも…。

姉妹による死闘(『みつばちの世界』より引用)

しかし群れにとっても大事な女王の体。傷つくのは生産的ではない。
貴重な女王という存在。
そこで抹殺することも死闘も回避する、という策も多々取られるようです。
それは、女王蜂同士の振動による会話によるものだそう。
先に巣房から出た女王は「プゥーと笛を」吹き、そのシグナルによって、次に羽化する女王を助けていた働き蜂は動きを止める。そして次の女王候補は「キィキィ」という答えを返す。そうしたやり取りによって、次の女王は羽化を遅らせ、先に羽化していた女王は群れの3分の2を連れて分蜂する。
そんなやり取りもあるのだとか。

そして交尾のため空へ

無事に巣の中を平定したあとは、いよいよ本業。
女王蜂の重要任務は産卵です。
羽化から約1週間後、14時頃、お付きの働き蜂(20匹程度)に護衛されながら、女王は交尾のため空に飛び立ちます。

女王とお付きの者(『みつばちの世界』より引用)

「婚姻飛行」(あるいは「交尾飛行」とも)と呼ばれる通り、みつばちの交尾は空高く上空で行われます。
女王はここで複数の雄と交尾し、複数の遺伝子をもった精子を持ち帰り、生涯をかけて産卵していきます。
(交尾相手の数は、セイヨウミツバチでは20匹弱、日本みつばちでは10匹くらいと言われたりするものの、正確には不明)

ここでちょっと驚くのですが、みつばちは精子を「貯精嚢」という器官にに貯蔵しておいて、毎回ちょっとづつ使っていくことが可能なんだそう。なんて便利。(しかも男女の産み分けも自由自在)

1匹の雄蜂が渡すことのできる精子の量は最大1100個、
女王蜂の貯精嚢に貯めることができるのは最大600万個。
この貯精嚢に次々と異なる雄蜂の精子が入り、混ざることで遺伝子の多様性も確保されていくことになります。

人間も精子バンクを作って貯蔵したりなど試みてはいますが、みつばちは常温で3年もの期間保存が可能だなんてなかなかすごいなぁと関心してしまいます。

さて、そして、「婚姻飛行」なんてロマンチックな呼び方をされるこの交尾ですが、行われていることはなかなかハード。
オスたちは文字通り、決死の覚悟で交尾に臨みます。
女王蜂は空高く舞いあがり、オスを誘因するフェロモンを放出。オスは引き寄せられるように寄っていき、先を争って女王を捕まえ、交尾をします。
しかし、女王を捕まえたら最後、オスは死ぬまで女王から離れることができません。

オスは生殖器を女王の生殖器に挿入すると、挿入器の内嚢の半分を裏返し、
そして力尽き、マヒ状態になって女王に挿入したままぶら下がる。
女王は自身で腹部筋を収縮させることにより圧を加え、内嚢のもう半分を裏返し、精子を自身の膣に送り込みます。
その圧の強さのあまり、上空でオスがパチンと音を立てて弾けてしまうこともあるのだとか。

パワフル…!

ロマンチックどころではなさそうです。
周りの雄蜂は、目の前でそうした事態が起こっていても、お構いなし。
女王の膣に残った他の雄蜂の生殖器を口で引きずり出し、交尾、というのを次々と繰り返し、女王が「よし、これで帰って産卵に専念するか」となれば終了です。

こうした一連のことは、普通はわずか2〜3分で行われるという(長いと1時間ということもあるようだけれど)。
来た時と同じようにお付きの働き蜂に守られながら戻ってきた女王蜂は、巣の働き蜂に迎えられ、腹部先端に残ったままになっている最後に交尾をした雄の生殖器(「交尾標識」と呼ばれる)を働き蜂に外してもらい、帰巣します。

交尾の標(『みつばちの世界』より引用)

迎え入れられる女王蜂(『みつばちの世界』より引用)

こうして精子を蓄えた女王蜂は、2〜3日後から、群れを増やし、維持していくために卵を産み続けていくわけです。

生涯に約100万個もの卵を産むという女王の平均寿命は平均2〜4年。
約3年程度なので、1年間に30万個と考えると、1日あたり30万÷365日=830個、
しかし、最盛期には1日2000個以上の卵を産むことができるという。
1つ1つの巣房にせっせと生み続ける女王蜂。
想像するだけでなんとも大変そうな。。

ということで

さて、今回は女王蜂のハードな初仕事についての回でした。
卵として生まれてから15日(セイヨウミツバチは16日かかるので、日本みつばちは1日早く羽化する)+羽化して1週間の間に、群れを治めたり交尾を終えたり色々あるわけですね。
なお、お付きのみつばちたちは何をしているのかというと、
交尾に不適格な雄を追い回して近づけないようにする、とか
周囲の環境を熟知しているため外界を知らない女王蜂をリードして道案内することで
不用意に外界を飛ぶ時間を短縮し外敵(鳥によって食べられるなど)から守る、とか
色々な説があるようです。

うーむ、しかし今回は写真が引用ばかりになってしまいました。
イラストとか何かで頑張りたかったものの力及ばず。
次からはその辺もなんとかできればと思いますー。

 

参考文献
吉田忠晴、2000、『ニホンミツバチの飼育法と生態』、玉川大学出版部
丸野内棣訳、2010、『ミツバチの世界 個を超えた驚きの行動を解く』、丸善出版

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