かきものCOLUMN

梅薫る、立ち込める春

  • 2017.03.05
  • by Yoko

先日の暖かい日、
彼女たちもそろそろ飛び回っている頃かしらと
久しぶりに山を訪れました。

もうすっかり春の色

ちいさな青い花をたくさんつけている

春の香りに淡い梅の色、実る柑橘。
気持ちのいい風に弾む足取り。

甘い香りがふわり

近くには柑橘もあります

 

 

でも、なんだか違和感。
巣箱の前まで来てみても、まるで賑わいがない。
あれれ・・・?
しばらく巣箱を覗き込んでいるとやっと出てきた。

ちょこちょこと出てきた

 

 

確かに出てきた。
でも、やっぱり様子がおかしい。

地上を這うミツバチがたくさん

まだ少し寒かったのか、それともダニにやられて動けなくなってしまったのか。
最初に行ったこの山はすごく静かで
わずかに出てきている群れの子たちも地面を這うばかり。
先日、聞いたアカリンダニの寄生症状にピタリとハマる。
みんな、苦しいのだろうか。
なんだか怖くて、ちいさな体で地面を力なく歩く子たちを見ていると悲しくて
鼻の奥がツンとしてしまった。
ダニはみつばちの器官に寄生して、繁殖していく。
そして窒息させる。
羽をふるわせる力が弱まれば、群れの温度も維持できず凍死もある。
ダニに悪気はないけれど、当のみつばちは苦しいだろう。
想像すると可哀想で、何もしてやれないけど、ごめんよと思う。

指に乗せても大人しくしている

 

一旦、いちじくの枝を切る作業に勤しんでから、
夕方また別の山へ様子を恐る恐る見に行く。

彼女たちはどうしてるだろう、
これだけ暖かくて日当たりの良い日だからちょっとは喜ばしくしているのではないか、
「早く会いたい」と心が弾む一方、
春を迎えられずにみんな地面に落ちてしまっているのでは…と、
不安な気持ちもどんどん膨らんでいく。

山に入ると、枯葉と新緑を踏む軽快な音。

 

枯葉と新緑が一歩ごとにザクザク音を立てる

草木のいい香り。

そーっと巣箱の前にいって様子を見てみる。

1匹、2匹と、中から出てきては飛び立って、
蜜を集めてきては巣の中へと入っていく。
大勢ではない、でも静かに活動を始めている。
よかった。

 

「いたいたー」

でも、いくつか見て回っていると、もう活動をやめてしまったらしき群れもある。
あんなに元気だったのに、冬は大変な季節なんだと実感が湧く。

さらに奥に分け入って、
昨年お父さんが竹藪だったところを拓いて巣箱を置いた場所へ行ってみる。

まず飛び込んできたのは甘い香り、
赤や白の淡くも鮮やかな梅の花々。
そしてみつばちたちの可憐な羽音。

 
梅とみつばち

一面に香る鮮やかな梅の花

ここの群れたちは変わらず元気でいてくれた。
女王蜂が若い群れだからだろうか。
理由はいろいろあるのだろうけれど、
とにかくみんな元気で嬉しい。

 
日本みつばち

久しぶりだね

そして、昨年春には分からなかったこと。
梅の花がこの場所は大層きれいだってこと。
足元がふかふかで、耳をすますと生き物の声や動いている音があちこちからする。

耳をすますと生き物の音が聞こえてくる

ちょっと奥まっていて、
まるで秘密の花園、なんてワクワク。
いや、小さな頃にあちこちに作った秘密基地の方が気持ちとしては近いかな。

 

甘い香りとやわらかな花々が嬉しい

アカリンダニの急な広まりによって脅かされている日本みつばちとの暮らし。
もちろんアカリンダニだけが理由じゃないにしても、
みつばちたちが弱っているのを肌で感じて、率直に言うと結構驚いた。
秋に「また春に会えるね」としばし別れただけのはずが、
こんなにたくさんの群れのみつばちたちに会えなくなるなんて。
このちいさな生き物は今後どうなってしまうのだろう、そんな不安も感じるようになった。

そんなことを感じる、淡路島で初めて迎える春。
島は、少しづつみつばちたちが飛び交い始めています。

(ようこ)