かきものCOLUMN

暮らしに詩を携えてvol.2 いにしへの日は

  • 2022.04.03
  • by Yoko

『いにしへの日は』 三好達治

いにしへの日はなつかしや

すがの根のながき春日を

野にいでてげんげつませし

ははそはの母もその子も

そこばくの夢をゆめみし

ひとの世の暮るるにはやく

もろともにけふの日はかく

つつましく膝をならべて

あともなき夢のうつつを

うつうつとかたるにあかぬ

春の日をひと日旅ゆき

ゆくりなき汽車のまどべゆ

そこここにもゆるげんげ田

くれなゐのいろをあはれと

眼にむかへことにはいへど

もろともにいざおりたちて

その花をつままくときは

とことはにすぎさりにけり

ははそはのははもそのこも

はるののにあそぶあそびを

ふたたびはせず

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詩のソムリエ」として活動している渡邊めぐみさん(以下めぐちゃん)に、4ヶ月に一度、一年間、詩を選んでもらう企画、2つ目の詩が届きました。

「春の野原であそぶ母と子の姿。
なんとなく、陽子ちゃんとなおちゃんを思い浮かべました。」

と、送ってくれた、春のふわふわとした景色が浮かぶやわらかな詩。

でも、あの、実はちょっと読むの難しくてすらすらとはわからんちん。
素直に言えず、「いいねぇ」なんて返事をしたけど、
わかりにくい部分を含めて楽しんで転がしていくのがいいなとも思ったり。

「ははそは=「母」にかかる枕詞 
 げんげ=れんげ
 ぽわわ~んとした景色が幻想的でひらがなの多用がきいた詩だな~と思っています。」

ふむふむ。

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この企画では、選んでもらった詩から、感じたこと、考えたこと、こんな写真撮れました、とか、
詩を読んでこの本が読みたくなったとか、そんなことを次の詩を紹介してもらう頃まで、ゆるゆるとアウトプットしています。
草地家のHPやインスタ、なや図書館等で公開中。

もし良ければ、感じたことをハッシュタグ(#暮らしに詩を携えて)をつけて教えてください。
もちろんそっとDMやメールなどでシェアしていただくのも嬉しいです。

ぼちぼち更新していくアウトプットの様子はこちらです。

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渡邊 めぐみ

1989年福岡生まれ。小学校入学時に詩の音読集『ひばり』(光文書院)が配られたことをきっかけに詩の楽しさを知る。

慶應義塾大・東京大学大学院で戦後詩を研究、修士号取得。2015年教育サービス会社に入社、高校生の進路と表現教材の企画・編集職を経てフリーランス。

新宿で会社員をしながらはじめた「詩のソムリエ」を2020年に本格的に始動し、詩のワークショップ・研修、詩にまつわる執筆・展示などを幅広く行う。動体視力がよい。

公式HP「ことばの舟」 https://kotobanofune.work/
twitter @amarlka  
Instagram megumi_watanabe_poetry

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